狂言ござる乃座　in　ＫＹＯＴＯ　３ｒｄ

平成２０年９月１５日(月・祝)１４時〜　　於：金剛能楽堂


「舟渡聟」
　　　　　　　　船頭・舅　　　　野村　万作
　　　　　　　　聟　　　　　　　　野村　萬斎
　　　　　　　　姑　　　　　　　　野村　万之介
　　　　　　　　後見　　　　　　 深田　博治



「弓矢太郎」
　　　　　　　　太郎　　　　　　野村　萬斎
　　　　　　　　当屋　　　　　　石田　幸雄
　　　　　　　　太郎冠者　　　月崎　晴夫
　　　　　　　　立衆　　　　　　高野　和憲
　　　　　　　　立衆　　　　　　竹山　悠樹
　　　　　　　　立衆　　　　　　中村　修一
　　　　　　　　立衆　　　　　　深田　博治
　　　　　　　　立衆　　　　　　岡　　聡史
　　　　　　　　後見　　　　　　野村　万作
　　　　　　　　　　　　　　　　　時田　光洋


昼間はパラパラだった雨、さすが「嵐を呼ぶ男」降ってまいりました。
今日は若手２人のお声も初めて聞きましたし、四十路を越えてもなお「可愛い聟」を満喫でき
た公演でした(笑)。


今回、特に印象深かったのが『舟渡聟』でした。
皆さん、いろんな配役でご覧になっていることと思いますが。聟はたいてい若手さんがやるの
で、とにかくきっちりと型どおりに真面目に、初々しく…という感じになります。そのおかげで、
船頭じつは舅の図々しさ、庶民的なたくましさ、後半のどんでん返しでのあわてぶり…という
のが際立ってくると思うのですが。
今回の聟さん、四十路です芸達者です。いやむろん初々しい…というか若々しく可愛くもある
のですが。
見慣れているはずの演目が、力のある人同士がぶつかり合うと、こうもドラマチックになるも
のか。聟と船頭、それぞれのキャラがぐぐっと立って、この曲そのもののドラマチックな構成が
際立ってました。
本来、狂言の役というのは細かなキャラ設定は説明されないものですが、この顔合わせだと
聟と船頭がそれぞれ背負っている生活感というかバックボーンまで透けて見えるような…良
い意味で「演劇的」と思いました。
ラスト、聟の謡が始まったところで、がらりと舞台の空気が変わり、ぐっと重量感が増したよう
に感じました。
舅と聟の連れ舞は、さすが親子というべき息の合い方。背の高さも腕の長さも、声の高低も全
然違っているのですが、ピタリと合っているように見えるのですね。やはり同じ「血」でないとこ
うはいかないものか。舞い納めで、まったく同じタイミングでぴたっと膝をついた瞬間は鳥肌モ
ノです。
いやはや、やっぱりこの親子、すごいです。「聟卒業宣言」は無しですよね若旦那！