国立企画公演【素の魅力】

2009年8月27日(木)　 18時30分開演　於：国立能楽堂


豪華な出演者と文字通りの素の魅力に惹かれて行って参りました。


◆舞囃子・観世流『養老』水波之伝
　シテ：梅若玄祥
　笛 ：松田弘之
　小鼓：大倉源次郎
　大鼓：山本 孝
　太鼓：助川 治
　地謡：川口晃平、小田切康陽、山崎正道、角当直隆

◆小舞・和泉流　『海人』　野村万作
　地謡：高野和憲、石田幸雄、野村萬斎、深田博治、竹山悠樹

◆狂言語・大蔵流『枕物狂』茂山千作

◆小舞・和泉流　『通円』 野村萬斎
　地謡：深田博治、石田幸雄、野村万作、高野和憲、月崎晴夫

◆素謡・宝生流　『檜垣』
　シテ：近藤乾之助
　ワキ：宝生 閑
　地謡：亀井保雄、佐野萌、今井泰男、高橋 章、當山孝道
　（解説はプログラムを参照しました）
　　　　　　　　　　


◇舞囃子は、一曲の能の主要な部分を、地謡と囃子の伴奏により、シテが紋付き袴で演じる
ものです。　　　　

『養老』　　　　　　

勅使は、美濃の山奥で知り合った樵夫の親子に、養老の滝へ案内されます。霊水の徳を称
え、勅使が帰洛しようとすると、楊柳観音とも言われる養老の山神が登場し、神仏は一体で
あり、すべては神仏が衆生を救うための手段であると語り舞います。舞囃子では男神の登場
から演じられ、緩急の激しい舞を舞います。　　　　　　　　　　　　　

☆梅若玄祥さんの舞囃子には圧倒されました（体格の問題ではなく・爆）。隅々までに神経が
行き届いており、しかも迫ってくるオーラがありました。



◇小舞は、狂言の中で酒宴の余興の場面などに舞われる部分を、仕舞のように地謡をバック
に演じる形式です。

『海人』　　　　　　

能『海人』の「玉之段」の部分を小舞に仕立てたものです。唐から興福寺へ贈られた三つの
宝のうち、龍宮に奪われた面向不背の玉を取り返すため、淡海公は讃岐の国志度の浦へ下
ってきます。公と契りを交わした海人は、生まれた我が子を世継ぎにと思い、淡海公の願いを
きいて海底の龍宮へ潜って行きます。海人は玉を自らの乳の下をかき切って押し込め、命を
捨てて玉を取り返します。その功により、子供は世継ぎとなります。　　　　　　　　　　　　

☆万作さんの小舞はやはり美しいです。能の舞にはない、狂言ならではの舞は、写実的で母
の子を思う必死さが伝わってきます。地謡の萬斎さん、相変わらず一番響く声で引っ張ってお
りました。顔色が黒かったせいなのか、頭がモッサリとしていたせいか、痩せたように見えまし
た。髭の剃り後も濃く、今一つの男前でございました(^_^;)



◇狂言語とは、謡、舞とともに狂言の表現様式を支える重要な要素である語りに着目し、狂
言の語り部分を独立して上演する形式です。　　　　　　　　　

『枕物狂』　　　　　

百歳にもなる祖父が恋をしているとの噂を聞き、孫たちが様子を見に集まり、祖父に尋ねま
す。初めは否定していた祖父も、志賀寺の上人や柿本の紀僧正の恋の話をするうちに、本心
が出てしまいます。

☆千作さんはヨチヨチとアヒルのように歩いてきて、葛桶にもヨッコラショという感じで座りまし
た。がっ、しかし！第一声で見所の目と耳を惹き付けてしまいました！確かに大きな声でした
が、それだけではない見所の気を反らさない間が素晴らしいです。まだまだ、お元気で私達を
楽しませてほしいです。



◇無幻能と同様の形式でワキや間狂言を登場させ、囃子や地謡をバックに、面を掛けたシテ
が能がかりで演じる狂言を「舞狂言」といいます。能のパロディとしての性格を持っていますが
「通円」は能「頼政」に近い作られ方をしています。　　　　　　

『通円』　　　　　　

宇治橋の供養の折り、橋の袂の茶屋の主人通円は、参詣に来た修行者三百人に、茶を飲ま
そうと大奮闘します。しかし、茶碗、柄杓も打ち割れ、これまでと思い、平等院の縁の下に団
扇を敷き、辞世の和歌を詠んで死んでしまいます。そして、このことを語った通円の亡霊は、
僧に回向を頼んで消えていきます。
　　　　　　　　　　
☆萬斎さん、濃いグレーの羽織と白の紋付き、白黒の細い縞の袴。頭も撫で付けてきたのか
スッキリとしていました。白紋付きの萬斎さんは華やいでいて私的には嬉しいです♪一所懸
命にお茶を立てるところでは、面がないので、その分表情がはっきり見えて、ちょっと芝居っ
ぽく感じました。でも、初めて通円を見られた方は「ああいう面白い小舞もあるのね」と喜んで
話されてました。舞に入ると流石に美しく、飛び返りもすばらしかったです。ただ、国宝二人に
比べて、余裕のない感じは否めませんでした。このメンバーの中ではヒヨッコですものね〜
(-.-;)



◇素謡は、能の一曲を謡のみで上演する形式で、囃子方は参加しません。今回はシテ、地謡
の他に、ワキの謡にワキ方宝生閑さんが参加しました。　　　　　　　　　　　　　　

『檜垣』
　　　　　　
老女が毎日仏に捧げる水を汲んで来るので、不審に思った僧が名を尋ねると、白河のほとり
に昔住んでいた白拍子だと名乗って消える。僧が白河にやってくると、檜垣で囲った庵から
白拍子の霊が現れ、地獄の苦しみを訴えて、成仏を願うのだった。

☆近藤乾之助さん初め、宝生の地頭を張るようなベテランのお歴々が登場。緋毛氈の上で
50分頑張っておられました。この曲は宝生では演じられておらず、素謡も乾之助さんのお父
様が演じられてから、25年ぶりとか。そのためか、乾之助さん、一ヵ所プロンプをもらっていま
した。ワキの閑さんは、居るだけで僧の装束を着け、亡霊に語りかけている様が目に浮かび
ます。地謡は流石に『謡宝生』で深みのある素晴らしいものでしたが、最後のほうで、ご高齢
者ばかりのためかエネルギー切れのように、足並みが乱れたのは残念でした。

とにかく盛り沢山で満足でした！！！