第１１回　万作を観る会　名古屋公演

越後聟につられ名古屋行ってまいりました。

平成21年1月24日(土) 14時開演　於:名古屋能楽堂



【番組】

●解説 林 和利

●狂言『越後聟』
　　聟：野村萬斎　舅：石田幸雄　太郎冠者：高野和憲　勾当：野村小三郎
　　地謡：竹山悠樹・野村万作・月崎晴夫・加藤 聡
　　大鼓：河村眞之介　小鼓：後藤嘉津幸　笛：藤田六郎兵衛　太鼓：加藤洋輝
　　後見：深田博治

●狂言『鐘の音』
　　太郎冠者：野村万作　主：野村萬斎
　　後見：高野和憲

●狂言『六地蔵』
　　すっぱ：野村万之介　田舎者：深田博治
　　すっぱ仲間：竹山悠樹・高野和憲・月崎晴夫
　　後見：石田幸雄



今回万作さんは『鐘の音』しか出演されません。以下は挨拶文の抜粋です。　
　　　　　
「江戸前狂言の開祖と言われた師父の芸を受継ぎ、いささか私なりに発展させてまいりま
した。能狂言の基礎である舞歌の技もその一つでございます。今回は稀曲の『越後聟』で
狂言の獅子舞を萬斎のシテでご覧いただき、私は平易な『鐘の音』を演じます」


●林さん解説

今度出版するご自分の本の宣伝も入っていました（笑）。狂言の起源を作品の内容から紐
解いているようです。『越後聟』では獅子舞を舞う萬斎さんの身体能力の高さを見て下さ
い。また、勾当の語る「平家」は平曲をもじって謡う狂言謡で、「平家物語」の中にはありま
せん。合戦の模様を滑稽な詞章で謡います…など話されていました。他にも話されていた
ようにも思いますが、覚えていませんm(_ _)mプログラムは演目解説がかなり詳しく載って
おり、分かりやすくなっています。


●『越後聟』

聟入りの話で、能登の国の舅が越後の聟を迎えます。姉聟も呼んでの宴会(笑)ですが、
舞や謡の好きな舅は聟達に酒の肴にと、舞や謡を所望します。聟の登場は船渡聟と同じ
ピンクの掛素襖姿♪40代とは思えない可愛さ★★ 舅の求めで鶉舞を舞いますが、是非獅
子舞を舞ってくれと言われ、鞨鼓を用意してきたのでその舞を舞いましょう、と言います。し
かし、我が儘な舅（笑）は獅子舞と両方舞ってくれと強引です(-o-;)。それでも石田舅だと
嫌味がなく、無邪気な舅に見えます。それではと、若旦那聟は鞨鼓の舞をしながら、水車
（凄いスピードでした！）で揚げ幕の中に〜〜！！！見所も息をのんでいました！

獅子舞の支度が整うまで小三郎勾当が「平家」を語ります。真面目に明晰な語りをするの
ですが、内容は例の「踵にヒゲ、頤にあかがりが〜」♪…思わずニヤニヤと笑ってしまいま
す。
　　　　　　　
聟殿の二回目の登場は衣を被って中腰で走ってきます。一度はきざはしまで走って来て、
見栄を切ります！！〜〜う〜カッコ良すぎ★倒立、飛び返り、欄干越え、欄干からの飛び
降り……そして舞の流麗なこと♪♪♪今狂言界でこんな美しい『越後聟』が出来るのは若
旦那しかいません（キッパリ！）。それにしても、恐ろしき40代です(・_・;)


●『鐘の音』

休憩を挟んで今回の万作さんのお相手は若旦那でした。惚けた万作太郎冠者にちょっと
怖そうな若旦那主のコンビは、さすがに息が合ってます。鐘の音は太郎冠者の独壇場！
万作さんの鐘はやや掠れ気味ですが味わい深い音色です。鐘の音を聞くために、太郎冠
者が鎌倉の寺を巡り歩いている情景が見えるようでした。　


●『六地蔵』

すっぱははまり役(笑)の万之介さん♪真面目な深田田舎者を騙そうとしますが三人で六地
蔵を演じるのは大変(>_<) メチャクチャな印相はいつもながら笑えますが、萬斎すっぱに比
べるとテンポはまったりとしています。ニセ印相もいつもより控えめでした。


●最後にまた林さん登場(笑)、万作さんを呼びお話をされました。なぜ『鐘の音』の舞台は
京都の寺ではなくて鎌倉なのか？　関西は『ね』の音が『ねぇ』となり、語尾が上がったり
下がったりして、どの『ね』か判別がついてしまう。関東は『ね』の音に区別がないので、こ
の曲が成立する。それで鎌倉になったのだろう、とのことでした。また、この曲に出てくる極
楽寺は現在の極楽寺（寺に鐘がない！）ではなく、浄妙寺のこととか。そして浄妙寺が極
楽寺と呼ばれていたのは室町より前らしく、このことから狂言は室町時代より前からあった
のではないか…というのが、林さんの学説のようでした。

また『越後聟』の萬斎さんの身体能力の高さに触れ、「万作さんも身体能力が高いですよ
ね」と林さんが言うと「（我が家は）体育会系ですから」と。そして「私も20代30代に（『越後
聟』を演じる）機会があればやっていたでしょう」と残念そうに話されてました(-o-;)