万作を観る会　in NAGOYA

2010年1月31日（日）15時開演 於：名古屋能楽堂



【番組】

◆解説：林和利（名古屋女子大学教授）

◆素囃子『養老』水波之伝
　　大鼓：河村真之介　小鼓：後藤嘉津幸　太鼓：加藤洋輝　笛：竹市学

◆狂言『無布施経』
　　僧：野村万之介　施主：石田幸雄
　　後見：竹山悠樹
　　　　　　　　　　　　
◆狂言『歌仙』
　　柿本人丸 ：野村万作　僧正遍昭：野村萬斎　果報者：野村小三郎
　　太郎冠者：野口隆行　次郎冠者：奥津健太郎
　　在原業平：深田博治　小野小町：高野和憲　
　　猿丸太夫：月崎晴夫　清原元輔：石田幸雄
　　地謡：加藤聡・野村万之介・竹山悠樹・時田光洋
　　後見：岡聡史・破石澄元



◇解説

プログラムに丁寧に書かれているので、語句の説明くらいで終わりまし
た。『歌仙』は稀曲で、林先生も初めて観るとのことでした。
この曲には珍しいことが３つあると。

１、演じられることが珍しい
２、歴史上の有名な人物が沢山登場する
３、最後に動きを静止させて終わる

この三点だそうです。

　　　　　　　　　　　　
《感想》

◇素囃子

「水波之伝」は観世流の小書で、後半の山の神が舞う箇所は、囃子に
工夫が凝らされているとのことで、いきなりアップテンポではじまりまし
た。途中で笛のテンポが変わるなど、変化のある演奏で、迫力もあり、
楽しめました。


◇『無布施経』

万之介僧が右往左往する様子は、可笑しいやら、可哀想やら(^_^;)先日
の『痺』の時にも感じたのですが、万之介、石田コンビの狂言はふんわり
としています。こんな人いるかも、これに似たようなことあるよね、…など
と思えます。みんな愛すべき人間なんだよね…なんて気になってしまい
ます。このコンビの狂言、お気に入りです(^_^)v


◇『歌仙』

今回は最前列中央という、万作家から頂いたチケットで最高の席でし
た。これで今年の運は使い果たしたので、次回からはきっと悲惨です
(爆)。
27日は髭のなかった人丸様、この日はキチンと髭を付けられていて、安
心致しました。名古屋ということで、27日に竹山くんが演じていた参詣人
の役を、小三郎家の三人が果報者と家来（これが本来らしい）として、賑
々しく演じられました。
若殿は相変わらず髭の剃りあとが青く、最初はあまり男前オーラを感じ
なかったのですが、さすが劇中小町に贔屓にされたのが効いたのか
(爆)、最後の静止シーンは男前度ア～ップ！！＼(^o^)／＼(^o^)／白い
細い指とともに、そのままお持ち帰りしたかったです～～～。
この曲も回を重ねて、後見の手際も良くなり、演目としても練れてきたよ
うに思います。万作家が毎年訪れる主な都市で、この曲を演じていない
のは京都だけになりました。和泉流専有のこの曲をぜひ京都でも演じて
欲しいです。


《あらすじ》

●素囃子『養老』

能『養老』で「水波之伝」の小書がつくと、後半、養老の山の神が現れて
めでたい舞を舞う箇所で、囃子に工夫がされている。

●『無布施経』

月々定例の祈祷のために檀家を訪れた僧、お経をあげ終えて帰途に着
こうとする。ところが今日に限ってお布施が出ない。これが今後の例に
なっては困ると立ち戻り、「ふせ」の付く言葉を用いたり、布施に気付くよ
うな話をするが効き目がない。あきらめきれない僧は、袈裟を懷に隠し
檀家に戻って、袈裟を見なかったか？と施主に問いただす。さすがに、
施主も布施を忘れたことに気付き、渡そうとするが、僧はこの次でよいと
断る。施主が無理に僧に渡そうと揉み合ううちに、懐から袈裟が出てく
る。僧は面目を失い、施主に詫びる。

●『歌仙』

瑞穂さんのレポ参照のこと(爆)



《恒例のトーク》

林先生と万作さんのトークですが、着替えのため、最初に林先生が一人
でお喋り。今年は万作襲名60年になりますと。それにあたって、万作さ
んのコメントを読み上げます。　　　　
　　　
≪兄が万之丞を、自分が万作を襲名した。昭和25年10月29日に襲名、
その時に『三番叟』と『奈須余市語』を披いた。当時能楽師で大学に進ん
だ者は珍しかったが色々な方と付き合えたことは良かった。一所懸命に
稽古して舞台にでても、神経質だ、余裕がない、などと評された≫（表現
は違うかもしれません）

《万作さんが登場》

林：華麗な舞台でしたね。

万：装束だけね(笑)昔はお能の方から借りたんですよ。今は自前です
が。

林：それで、よく演じられるようになったのですね。ところで、襲名60周年
になりますよね。

万：私は襲名何年かというのは気にしていません。舞台何年かは気にし
ますが。大した名前でもありませんし (苦笑)。　　　　　　　

林：襲名60年を記念して記念日（10月29日）に明治書院？から『万作の
世界』という本が出ます。その中に万作十八選も入れたいと思っていま
す（どうやら仕掛け人の一人らしい…）。先日演じられた袴での『釣狐』も
入ります。そうそう、また『釣狐』をやられるそうですね。

万：9月24、25日に厳島神社でやります。とてもいい舞台なので。是非、
観に来て下さい。

林：十八選はいつ最終ですか？

万：あと『花子』と『釣狐』が残っていて、厳島神社の『釣狐』が最後で
す。（花子をいつするのかは話に出ませんでした）

林：これに万作さんのインタビューも入れたいと考え、朝日カルチャーセ
ンターに協力して貰うことになりました。6月に三回、林がインタビューす
る予定です。今日、このチラシが置いてあると思います。会場は何故か
(笑)愛知淑徳大学です。万作さんから皆さんに何かお話ありますでしょう
か？

万：先日、国立能楽堂で『木六駄』を演じましたが、その日は、天皇皇后
両陛下がおみえになりました。公演後拝謁して、20分ほどお話をさせて
頂きました。（天皇が学習院小学生のころ、今横浜能楽堂の舞台になっ
ている染井能楽堂にいらして、茶室で出た大福餅を楊枝で食べるのに
苦労された、とのこと。解体で萬斎さんが、和菓子を食べるのに苦労して
いたのを思い出し、思わずにやけてしまいました。また、学習院ホールで
の公演の時、万之介さんの猿がピアノの下に潜ってしまった話。昭和
60年に、当時は皇太子殿下だったご夫妻が主催した公演で演じた『蝸
牛』の謡「あめもかぜもふかぬに…」を皇后が覚えていらした話。を嬉し
そうに話してました。）