三響会京都公演
2009年8月3日(月)4日(火) 両日共 13時・17時開演
於：京都・南座
一、十一世田中傳左衛門十三回忌追善『江口』二題
◆歌舞伎と舞踊による「時雨西行」
江口の君：片岡孝太郎
西行法師：若柳吉蔵（３日） 尾上青楓（４日）
笛：福原寛
小鼓：田中傳左衛門
大鼓：田中傳八郎
太鼓：田中傳次郎
（他の唄、囃子方は省略致します）
◆半能「江口」
シテ：観世喜正（３日） 片山清司（４日）
大鼓：亀井広忠
小鼓：吉阪一郎
笛 ：杉市和
地謡：（３日）坂口貴信 橋本忠樹 味方團
梅若晋矢 味方玄
（４日）橋本忠樹 味方玄 浦田保親
梅若晋矢 観世喜正
二、◆舞囃子「安宅」延年ノ舞
シテ：観世清和
大鼓：亀井忠雄（３日）亀井広忠（４日）
小鼓：吉阪一郎
笛 ：一噌幸弘
地謡：（３日）坂口貴信 味方團 味方玄
梅若晋矢 観世喜正
（４日）坂口貴信 味方團 味方玄
梅若晋矢 浦田保親
◆歌舞伎「滝流し」
立方：中村富十郎
小鼓：田中傳次郎 田中傳左衛門
大鼓：亀井広忠 田中傳八郎
笛 ：福原寛
（他囃子方は省略致します）
三、狂言と歌舞伎による「二人三番叟」
〈三響会構成 藤間勘十郎振付〉
三番叟：野村萬斎
三番叟：市川染五郎
鈴渡し ：茂山逸平
小鼓：田中傳左衛門 田中傳次郎
大鼓：亀井広忠
笛 ：一噌幸弘 福原寛
太鼓：田中傳八郎
（他唄、囃子方は省略致します）
＊＊歌舞伎の唄や囃子方については、よく分からないので省略させて頂きました。済みま
せんm(__)m
演目の解説は当日のプログラムからお借りしました。
一、『江口』二題
◆歌舞伎と舞踊による「時雨西行」
＊＊西行法師が江口の里へ至る様子を見せた後、一夜の宿を借りようとするところ、江口
の君が現れて歌のやり取りをした後、二人は互いの身の上を語り合います。その後、江口
の君の姿が普賢菩薩となって、西行法師に悟りの境地を教えて幕となります。
◆半能「江口」
＊＊摂津国江口の里にやって来た旅僧が、古の西行法師の故事に思いを馳せるところ、
一人の里女が現れ、自身が西行法師と歌をやり取りした江口の君の幽霊だと言って姿を
消します。やがて、秋の月影の下、江口の君が他の遊女達と現れ、淀川で舟遊びに興じ
る様を見せる内、舟は白象、江口の君は普賢菩薩の姿となって、白雲に乗って西の空へ
と飛び去ります。今回は能の後半の場面に焦点を当てて演じる半能の形式で上演。
《感想》
「時雨西行」は勘十郎さんの振付で、片岡孝太郎さんの歌舞伎舞踊と、若柳吉蔵さん、尾
上青楓さんの日舞とのコラボレーションだったようです。舞踊の知識は皆無ですので、どの
辺に違いがあるのか、さっぱり…(^_^;) 能楽の舞と違い動きが柔らかいので、日舞のお二
人の西行は、どうもお坊さんのイメージが湧きませんでした。また、孝太郎さんの江口の君
も艶めかしくて、最後普賢菩薩となって去って行くところも、イメージ出来ませんでした。
やはり、お能で慣れて（!?）いると、イメージ出来ないのでしょうか？
でも、孝太郎さんの江口は美しく、日舞のお二人の舞も綺麗でした。
半能「江口」。今回は地謡が素晴らしかったです。梅若晋矢さん以外は関西のシテ方のよ
うでしたが、江口の君が最後白雲に乗って去って行くところまでイメージさせてくれました。
３日は観世喜正さん、橋掛の倍もある花道を登場。舞終わって、また退場していく間、地
謡はずう〜っと緊張が途切れることなく江口の君を送っていました。
席が前の方だと、喜正さんの背の高さが最初は気になりましたが、最後は有難い普賢菩
薩のお姿に見えました。
４日は、２列目で花道すぐそばの席でした。前日登場と退場でかなり時間がかかったこと
で変更したのか、清司さんは主に花道を使って舞っていました。そのため、清司さんの江
口を真下から見上げるという、能楽堂では絶対あり得ないポジションからの観劇になって
しまいました。
能楽堂での清司さんの女性は美しく、幕から出て来た瞬間に女性と思えるのに、今回は
どうしてもイメージ出来ず残念でした。地謡は４日もとても良かったのですが…(-_-;)
二、◆舞囃子「安宅」延年の舞
＊＊能の４番目物の中でも代表的な大曲。小書きの延年の舞は、鎌倉・室町時代に寺院
において行われた法会の後に、僧侶や稚児によって演じられた芸能「延年」の型を基にし
た舞。今公演では、演目のクライマックス部分のみを、面、装束を用いずに、紋付き、袴姿
で演ずる演能形式の舞囃子で上演。
◆歌舞伎「滝流し」
＊＊能の「安宅」を長唄の舞踊劇として、歌舞伎に取り入れた作品が「勧進帳」です。初
演は天保十一年(1840)でしたが、明治になって九世團十郎が創意工夫を加えて、今日の
形となりました。その中に「滝流し」があります。これは、能「安宅」の中で、弁慶の舞の型
の小書の一つである「瀧流」を基にしています。扇を滝に投げ入れた心で、数珠を持って
舞ながら橋掛りへ行き、勾欄に寄って滝を見上げたり、その流れを見る体で勾欄の下を見
ながら舞台に戻る型を、歌舞伎の「勧進帳」の中に取り入れたものです。今公演では歌舞
伎における「滝流し」の場面を上演。
《感想》
観世宗家が自ら「ぜひ京都のお客様に観世宗家の延年を見ていただきたい」と申し出が
あったと、三兄弟の座談会の会話にあるように、気合いの入った舞台でした。
本物の弁慶が山伏に扮して現れたのではないか、と思うくらい力が入っていました。
力強さから言えば、やはり能の弁慶！と思いました。
今回は、歌舞伎の富十郎さんがかなり短い舞でしたので、観客には、能「安宅」の印象の
ほうが強く残ったのではないかと思いました。
また、一噌幸弘さんの笛は相変わらず耳に残る素敵な音色でした。
歌舞伎「滝流し」の富十郎さんは、登場するだけで存在感があります。舞も凛々しく、美し
かったです。ただ、高齢のためか、やや息が上がっていたように見えました。お元気ならも
う少し長く舞って頂きたいと思いました。
三、狂言と歌舞伎による「二人三番叟」
＊＊能の中でも最も神聖な曲として扱われる「翁」は、申楽の祖先として極めて特別な扱
いを受け、天下泰平を祈念、また、その中で舞われる「三番叟」は五穀豊穣を祈念するも
のです。これが歌舞伎にも取り入れられ、「三番叟物」という数多くの歌舞伎舞踊が生ま
れました。「二人三番叟」もそうした作品の一つです。三響会では、能の中で狂言師によっ
て演じられる三番叟の舞と、歌舞伎の長唄曲による三番叟の舞とを競演させるという新た
な試みとして、平成十七年に上演、大好評を博しました。烏飛びを見せる「揉みの段」から
始まり、この舞が終わると二人の三番叟に鈴が渡されます。三番叟は鈴を振り鳴らしなが
ら、五穀豊穣、子孫繁栄を願いながら「鈴の段」を舞い、めでたく舞い納めます。
《感想》
３日昼、若旦那は三兄弟とお揃いの紫の袴、染五郎さんは普通の袴だった（たぶん…；）
と思います。何でお揃いなんだぁ〜と突っ込みを入れてました（あまり好みの色でなかった
ので…）。
一番心配だったブロッコリー頭ではなかったので一安心でした（保護者目線・笑）。
席は３列目舞台に向かって右寄りでしたので、染五郎さんのほうが近かったのですが、二
人で舞っているときは当然若旦那ばかり見ていました。若旦那が座して待っているとき
は、染五郎さんの舞いを見ているのですが、じっとしていても気になってチラチラ(^_^;)。結
局はほとんど染五郎さんは見ていない（爆）…DVDで見ているからいいよねぇ…って誰に
言ってる？？？
囃子方は亀井三兄弟と幸弘さん、気合いが入らない訳が有りません!!。相変わらずの美し
い烏飛び、囃子方とせめぎ合うかのような足拍子、舞台に引き込まれる「ホンホッ」の掛け
声…息をするのも忘れて見入っていました。
揉みの段が終わり、三方に二つの鈴を乗せて逸平くんが登場！ 若旦那三番叟と逸平千
歳とのやり取りのあと、三番叟二人が鈴を取って「鈴の段」が始まります。
他の人のブログにもありましたが、脇柱に向かって鈴を振る若旦那に「きゃあ〜、私を見て
私に気を送ってくれたわ〜」と勘違いしたくなります(^_^;) それぐらい、若旦那の表情には
引き込まれてしまいます。
前回、最後のところで、歌舞伎の方が決めポーズもあり、負けてるかな…と物足りなく感じ
ていましたが、今回はしっかり最後まで見せ場を作ってくれていました。
説明がうまく出来ませんので、また、どこかで映像で見せてほしい、と切に希望します。
４日昼は２列目の花道のすぐそば。若旦那三番叟は真正面！
最初から最後まで若旦那の格好良さに痺れておりました(*_*)
袴はいつもの細かい縞柄で、昨日よりはず〜っと良く似合っていました（毒）
この回で、珍しく汗をかいていた若旦那を見て、萬友さんは「昨日花街で飲み過ぎてたりし
て…」と。あり得そう…と、思わず頷いてしまいました（爆）
若旦那、クシャミしていたかもしれませんね（笑）
「野村萬斎さんと二人でライフワークにしていこうと誓っている『三番叟』を京都、そして全
国の伝統芸能ファン、能・歌舞伎ファンの方々に見て頂きたいと思っています」〜〜〜今
回のプログラムに載っている広忠さんの言葉です。
１０月には日経ホールで広忠さんプロデュースの『三番叟』公演もありますね。万作さんの
三番叟では、珍しいことに若旦那が千歳をつとめます。今から楽しみです♪