鷹の泉

2004年12月25日（土）

本日、能楽観世座第４回公演「鷹の泉」観てきました。

シテ（老人）　友枝昭世
ツレ（鷹姫）　観世清和
ワキ（空賦麟）関根祥人

　　笛　　一噌幸弘
　　小鼓　大倉源次郎
　　大鼓　柿原崇志
　　太鼓　金春国和

　　　後見　木月孚行、観世芳伸、上田公威

地謡　野村四郎、山本順之、浅井文義、岡久廣、
　　　　関根知孝、武田尚浩、浅見重好、藤波重彦

アイルランドの詩人イエーツが能に影響されて作ったと言う「鷹の井にて」を基に
横道萬里雄氏が新作能にした初稿の作品で、喜多流で初演された「鷹の泉」の
再演です。

去年、話題になった「鷹姫」はその後、観世寿夫氏の要請で新しく創作されたもの
で、能の形式に則って創られた「鷹の泉」と、それを取り払った新しい形の能として
創られた「鷹姫」の違いなど、とても興味深く観ることができました。

「鷹姫」にあった岩のコロスは無く、地謡は地謡としてあり、鷹姫は一畳台の上の
作り物の中にいて、はじめは姿を見せません。
舞台に先に出てくるのはワキの空賦麟、能「鷹の泉」ではシテが老人、ツレが鷹
姫、ワキが空賦麟なんですね。
忠実に能の形式に則っていて、今回は、この能のシテは老人なのだということが
はっきり分かりました。

カッコよく立ち回る空賦麟が観たい人には物足りないかも（笑）

「鷹姫」が現れ、泉が湧き出てくる時の地謡とお囃子は最高です。
「あたらさまら、ききりさや」という呪文のような言葉に「水よ、水よ、水よ」という言
葉が低く重なって、こんこんと湧き出てくる水の勢いが感じられ、力強いお囃子と
観世宗家の急の舞は最高でした。そしてなにより一噌幸弘さんの笛が素晴らしか
った！

後シテの幽鬼となって現れた友枝さんの老人は、永遠の命を求めるはかない願
望によって、幽鬼となっても泉のほとりを離れることの出来ない無残な姿を表し、
その苦しみ、哀しみがこちらにもひしと伝わってきて、ぐっときてしまいました。
去って行く時の長い白頭の後姿が寂しくも美しく、いつまでも見送っていたい気持
でした。